おめめの歯形

自分の足跡を残すというより、必死に食らいついて歯形くらいしか残せない

スロウ バラード

誰かが
私のことを
心から好きだったらいいなぁって思う

誰かが
私のことを
心から必要だったらいいなぁって思う

思いとか
気持ちとか
全部空回り

ひとりでに突き進んで
結局
所在なさげ

手を伸ばしても
届かないものばかり
探しているものも
見つからないものばかり

誰かが
思いっきり手を伸ばしてくれたらいい
私に向かって一直線に
そんでさ
それを私が掴んでさ
ありがとうって言うの

ありがとうって

君のためにここまで来たんだよって言って
そしたら私さ
待ってたって言うから

笑顔で言うから

そんでさ
掴んだ手はさ
二度と
離さないから

でもほら
そうもいかないんだって

誰かが
私が泣いても気付きませんように
いつもの
ありふれた
毎日でありますように

ふとした時の存在でいたかった
通り過ぎた後でもいいから

私が扉をノックしても
誰も開けてくれなかった

それでもいい
きっと
いい

今なんてロング缶片手

ニュースで野球選手と女優の結婚が発表された。


てっちゃん、見た?
あの野球選手さ、2人で甲子園の予選で見た子だよね。すごく暑い夏の、てっちゃんの母校のグラウンド。
「俺の高校の後輩なんだよね」って興奮して話してた。


野球好きのてっちゃんに連れられて、私、沢山球場へ行ったけど、あの子の事はとくに覚えていたよ。


プロになってからも好調で、ついに結婚だって。まだ若いのに。でも、スポーツ選手は結婚が早いんだよね。年上女房となる相手の女優、私、好きだよ。


夏の日にあの子をグラウンドで見た時は、

てっちゃん、絶対にこの子はプロになって活躍するって興奮気味に話してたよね。


あの時、あの時はさぁ。
私たちが結婚する予定だったんだよね。
お互いの親にも紹介済みでさ。
週末っていったら野球見にいってた。


私の左手の薬指にはバンクリが輝いて。

あれさー、嬉しくて嬉しくて、一日何回眺めたかわかんないんだ。

 

その時はさ
あの子がドラフト指名されるのを、リビングで眺めるてっちゃんを私がキッチンから眺めているとか

あの子がプロ初登板になったのを、興奮してビール片手に笑うてっちゃんの隣にいる私とか簡単に想像できていた。

だって、私の左手にはキラキラのバンクリだよ?


野球なんて全然好きじゃない私。
私が聴くロックを好きじゃないてっちゃん。


てっちゃんちの引き出しのタオルをキレイに並べたら怒られた。


旅行中にスマホゲームしてたから怒った。


朝ごはんに時間かけすぎるとか、シャワーヘッドの向きですら言い合いになったのに。


でも、2人とも思ってた。


結婚するんだから。
結婚してから治してもらえばいいや。
馬鹿だったね。


今、この時に言えない事が、未来で言えるわけないのに。


てっちゃん、あの子、結婚したね。

 

てっちゃん。

あのね。

私もね。

 

結婚したんだ。

言ってなかったけど、夏より冬のが好き

私は知っている 
「経験値」が問われるなら、だいぶ、ある


最初は楽しい
ドキドキして
顔がニヤけて
用もないのにスマホを見ては一喜一憂


「これが好き」
「これは嫌い」
に敏感になって


新しい服を買って靴を買って
迷走したり


それでも嬉しいことがいっぱい


行きたいところは沢山で
過ごしたい時間も沢山で


読まなかった本を開き
聴かなかった音楽を聴き
買わなかったものを買う


おかしいな、と思わないようにしたって
一回思ったら、もうおしまい


楽しいな、が、楽しいといいな、になって

悲しいと苦しいと辛いの割合が多くなって


気付けば


約束が守られなかっただけ


クローゼットには袖を通していない服か増えただけ
棚には好みではなかった本が増えただけ


あんなに緊張していたスマホチェックは
画面が滲むようになっただけ


名前が一個、無くなっただけ


いつから1人だったのかなぁ、と思う


最後の言葉は「ごめんね」
謝られるのは、いつも、私の方

前髪は切らない

「今季一番の暑さになるでしょう。」
洗濯機のゴウンゴウンと唸る音を聞きながら、
テレビに映ったお天気お姉さんの服を見て、今日こそはクローゼットの中の衣替えをしようと決意した。

 

「昨日、寝れなかったんだ」

「なんで?」

「バチっと夜中に目が覚めて、どうしようもないない不安に襲われて」

「不安?」

「そう、ない?たまにさ。どうしよーもない、わけわかんない感じ」

「うーん、昔はあったけど」

「そうゆう感じ!」

「でもそれ、バイトとかの身分で、俺、このままどーなっちゃうんだろう?みたいな時だよ。今は流石にないわ」

「えー、あ、そう?私はまだあるんだなぁ。どうしようもないさぁ、こう、、」

「大丈夫だよ」

「え?」

「どーにもなんないんだから、今の生活」

 

私にはなんの力もない、という烙印をサクッと押されたようだ。

 

「じゃ、いってきます」

「いってらっしゃい」

 

昨日の夕方のニュースが、ほぼ今朝のニュースで、そりゃ十何時間で世の中そんな大事件ばっか勃発しないよな、なんて思いながらテレビを消す。

洗濯物を干して、一階も二階もクイックルワイパーと掃除機をかけた。
少しのティータイムをとり、ガスレンジの掃除に取りかかる。
この調子だと、午前中には衣替えまでも終了しちゃうなぁ、なんて考えながら手を動かす。

 

「お兄さん、松井に似てる」

「松井?松井ってー、、ゴジラ?」

「うわっ、お兄さんふっるー、違う違う、そっちの松井じゃなくて、野球選手なのはおんなじなんだけど、最近結婚したさぁ」

「俺、野球、全然見ないんすよ」

「えー、松井って救世主だよ!今、松井いなかったらやばいもん」

 

私、知ってます。


美容室で、カラー剤が髪に浸透するまでの、あのマヌケなスタイルで、隣の女性に危うく声をかけるところだった。

 

「ねぇ、ほら、この子」


隣の女性が担当美容師にスマホの画面を見せている

 

「えぇー!似てなくないっすか?なぁ?」

「あー、どうでしょう?まぁ、、似ている、似ていないって、感性ですよね」


巻き込まれた若いアシスタントは、スタイリストと客に挟まれて困惑している。

 

「絶対、似てるって。でも、ほんと、松井いなきゃ終わってんだもん、今のチーム。松井、いいよ!お兄さん野球観てみて!」

 

似ていないと思います。

私、彼がプロになる前、甲子園の予選で彼の試合見たんです。

その時、隣にはてっちゃんがいました。

 

「松井くんがスゴイから見に行こう」

 

てっちゃんは松井くんの高校のOBでした。
野球が好きで、大好きで。
私たちのデートは、ほぼ球場といっても過言ではありませんでした。
私は野球よりも、てっちゃんが好きでした。

暑い暑い夏の日で、汗だくで、メイクなんてすっかり剥げ落ちた顔の私は、てっちゃんに嫌われたくないためだけに、あのベンチに座っていました。

 

それでも、素人の私でも、マウンドに立つ松井くんは凄みがあって、てっちゃんは彼に釘付けで

 

「絶対プロになる、絶対活躍する、絶対」
と興奮しながら何度も言っていました。

 

私はその時、ドラフトを祈るように見ているリビングにいるてっちゃんを、キッチンから眺めている私も、プロ入り初登板をビール片手にてっちゃんの隣で見ている私も全部想像できたし、現に私の左手にはティファニーが輝いていて、これからくる素敵なキラキラした日々以外、あり得ないと信じていました。

 

「お待たせしましたー!色チェックしますね。うん、いい感じです!シャンプーに入りますね」

 

松井くん、結婚したんだって、てっちゃん。

 

「流したりないところ、ございませんか?」

 

私も、結婚したんだよ、てっちゃん。

 

ガツン、と五徳が響く音がしてハッとする。
シンクの蛇口には、昨日髪を黒く染めた私が歪んで映る。

 

私は、きっと、幸せです。

拝啓、はいね様

巷では狂ったように
「平成最後」「平成最後」と叫んでる。
情報媒体では「あと○日で新年号発表」と躍起になっている。
その通りで、あと少しで平成が終わる。

2018年が終わる時も、2019年が始まった時も、私は、とあるブログの更新を待ち望んでいた。
そう。
みんな大好き(個人調べ)加藤はいね氏のブログだ。

彼女の文才に魅せられて6年。
過去記事から最新記事までむしゃぶりつくように読んで、特に好物だった佐藤関連の記事はちょっと暗唱できる部分もあるくらい。

はいね氏の筆が遅いことは有名で、さらにここ数年は一年に一記事くらいのペースになっていた。
オリンピックよりはやってんな、くらいに思ってが、ブログの更新はないまま、2019年を迎えたし、まさかの平成が終わる。

はいね氏、2019年ですよー!
平成が終わるし、新しい元号になって、東京オリンピックもやってきて、とにかくネタ、沢山あるよー!!

私みたいな底辺クズが叫んだところで、返してくれんのはやまびこくらいだろう。

はいね氏の初期の記事に、東京タワーが綺麗って佐藤に送ったら、佐藤がちゃんと感動してくれたっていうのがあって。
私はそうゆんが好きだったから、はいね氏が処女であろーと、そうでなかろーと、なんつうか、心が「ぐわん」てもってかれる文章が好きだったのだ。
うん、それでいいじゃないか。

残念な気持ちもあるし、ホッとしている気持ちもある。
複雑な感情ではあるけど。
名前を変えて、はいね氏がブログをやっているかもしれない。
仕事に追われているかもしれない。
海外へ行ってしまったのかもしれないし、ギネス記録に挑戦しているのかもしれない。

かもしれない。
かもしれない、は、もう、ずーっとかもしれない、なんだよ。

どっかのブロガーさんが「もう加藤はいねは処女ではなくなり、幸せなんじゃないか」と記事にしてあった。
わかる気がする。
てか、せめて、そうであってくれ。
アイドルがアイドルのまま引退してくれたってゆうか、普通の女の子に戻ります的な、まぁそんな感じで、私の腹八分目の時に更新がなくなった。そんだけ。

佐藤が結婚した時は私も全然オーケーじゃなくて、バガボンド宮本武蔵のように空を見上げたしね。
ランドセル背負ってない方の佐藤に私も会いたいし。

少なくとも私の平成に、はいね氏の存在は大きくあったのだ。

その平成も、私の意思や許可なく終わるっつうんだから、そらいっちょラブレターでも、と綴りました。

大好き、でした。
はいね氏がどうか幸せでありますように。

ルームナイトウェア

今まで意識していなかったが、女たるもの、ルームナイトウェアにも気を使った方がいいと思うようになった。

 

ルームナイトウェアとか言ってっけど、要はパジャマね。

その辺の適当なTシャツとハーパンとパーカーはダメだなと。

色気もなんにもねぇ。

いや、寝るだけだからね、って思ってたワケ。

 

えー、パジャマパーティーとかあるじゃん?

は?なんだそのパーティー、早く寝ろよ。

えー、お泊りとかあるじゃん?

は?誰も興味ないわ、早く寝ろよ。

 

サエコあたりが「やっぱりモフモフは最強♡」とか言ってるの見かけて、心底うんざりしてたんだけども、その辺りはこう、もっと心を広くしいいんじゃねーかと。

 

パジャマとやらにお金を費やさなかった人生、費やした人生、両方味わえんなら味わっておこうか、と。

30代前半までそこに考えが至らなかった己を恥じたい。

 

そんなんで意気揚々とUNIQLOへ向かった。

 

いや、UNIQLOかよ!

 

と、お思いの皆さん。

ジェラピケやらチュチュアンナやら沢山ある中で、なんで私がUNIQLOを選んだか説明させて。

 

入りやすかったの。

 

ネットでの購入も考えたけど、まぁまぁ、UNIQLOって結局使いやすいし安いし初心者向きでしょ。いっかってなって。いいよね。

 

さ、UNIQLOで商品を探すとうっかり上下スウェットとか手に取りそうになる。

いかん、目当てはパジャマや。

いざパジャマエリア。

 

型は何種類か、柄は沢山あった。

無地が無難だと思いながらも、

「無地はやめよう、せっかくのルームナイトウェアデビュー、派手にいこうぜ!」

と、もう1人の自分に鼓舞されて燕柄やチェック柄を手に取ってみる。

 

今より20キロ以上太っていた時

中川家の礼二に似ているね」

 

痩せてベリーショートだった時

「ジャニーズにいそうだね」

 

そんなブレブレの見た目の私だが、

唯一共通しているのはどちらも男性という、性別を超越しちゃってるってこと。

そんな奴がチェックとかツバメとかキャピキャピしてどーすんだと。

 

ここはひとつ、鉄板のストライプでいこう!

色はピンク!

いやピンクはやりすぎだ!ブルー!

 

結果、白地に薄いブルーのストライプを購入し帰路に着いた。

 

帰って早々に試着してみると、

あらやだ!可愛い!

ブランニュー私!

ナイストゥーミィーチュー!

 

テンションMax。

 

これは普段私に興味のない旦那もなんか言うだろうとウキウキ。

 

この日、旦那は飲み会で遅くなり、帰宅したのは午前2時。

まぁ待ってみたよね。

 

帰宅した旦那は驚愕の表情

 

「まだ起きてたの!?」

 

そらそうや。

普段絶対寝ている私が起きている。

 

「昼寝しちゃったから」

 

とりあえずパジャマにはちっとも気付かずに、訝しげに私を見ながら一言。

 

「そうなの?いやでもこの時間だよ?

早く寝なよ」

 

やべー、やっぱり言われたわ。

パジャマ買ったところで、それみたことか。

 

旦那は言うだけ言うと自室へ引っ込んでしまった。そのうち鼾が聞こえてきた。

 

いやいや、酔っ払ってるし。

明日があるよ、明日が。

そう思いながら私も寝る。

 

一夜明けた朝。

 

起きてきた旦那に

「ジャーン」と、わかりやすく全身をアピールしてみた。

 

「あ、買ったんだ」

 

「うん!どう?どう?」

 

可愛い?似合ってる?どう思う?

心の中で旦那がなんて言うか考える。

 

「お父さんみたい」

 

「え?」

 

「お父さん」

 

「、、それ、ウチのお父さん?それとも他所のお父さん?」

 

「どっかのお父さん」

 

「そっか、ウチのお父さんではないのか」

 

うん、なんだこの会話。

 

2018年も終わりに近づいて、

平成最後、平成最後とやたら最後感が高まる今日このごろ。

 

私のパジャマも最後になるとは。

 

中川家の礼二

ジャニーズ

 

そこに加わった

 

お父さん

 

ジェラピケでも行くべきかな、ねぇ、サエコ

透き通る

何に縛られてるわけでも頼まれたわけでもとにかくなんでもないのに。

 

私は勝手にがんじがらめでしくじって他人のせいにして無様。

 

涙がものすごく出るからやわらか〜いティッシュで拭ったら毛羽立ちがついてイラついた。

 

私の頭の中は何かで常にいっぱいなのに空っぽで。誰も何も。

 

私は何も。

 

昨日台風がきて、家がガタガタして眠れなかったんだ。怖かったんだ。

お父さん、お母さん、聞いてる?

 

一番大人なはずなのに、一番子供。

私は戻れないから大丈夫なほう。

 

今日はマズイ。

朝からめざましの占いが11位だったし。

 

会社ではいつも以上にうまく喋れなかった。

 

涙が止まらなくて、自分は病気なのかもとか、弱すぎるとか、普通の事を考えたけど、

私はもうとっくにはみ出してて、悲しみや痛さだけが一丁前に普通なんてありえないんだ。

 

夜明けには、私から発せられる第一声は何が正解か考えながら眠ろう。