秋のおとずれ
働かなくなってから、外に出るのが面倒になった。
あんなに美味しかった仕事後のビールも、仕事をしてないから必然的に飲まなくなった。
先日、友人2人と旅行へ行きたいねと話していた。1人はOLで、8年くらい付き合っている事実婚状態の彼氏がいて、隣県に戸建てまで購入しているが、いまだに籍は入れていない。
もう1人は保育士、こちらも隣県で一人暮らしをし、彼氏はずっといない。
2人ともしっかり仕事をしているため、私より俄然お金の自由が効く。
そんな2人と旅行の話になった時、そろそろ本気で働かなきゃなと思った。
全員同じ年、32歳。
結婚しているのは私だけだ。
そんな環境だからか、うっかりしていた。
私は子供が2人くらいいてもおかしくはない年齢だということに。
久しぶりに乗った電車は空いていて、ゆっくり本が読めた。
一回の乗り換えと、駅から徒歩10分で心が折れそうになる自分がいて、末期だなと思った。
面接へ向かっているのに、どこか上の空で、なんだかこの街で働く気がしないなぁなんて思っていた。
面接の会社に着き、応接室のような場所に通され、座って待つように言われる。
かなり雑多な雰囲気で、掃除したいなと一瞬よぎるが、またココでそんなことをしたら、前の会社の時のように鬱陶しがられるだけなんだろうなと思い直した。
面接官が入る。
男性1名、女性2名。
一通り終わったあと、女性2名だけが残った。
なんでだろうと思ったら
「大変失礼なことを承知ですが、妊娠のご予定などありますか?」と聞かれた。
あぁ、そうか。
そうだよな、この年齢で採用し、すぐ子供ができて辞めるなんて言われても困るよな。
でも、私だって聞きたい。
いやむしろ、私の方が聞きたい。
「私に妊娠の予定はあるんでしょうか?」
誰にも悪気はない。
結局、「今のところはありません、できたらいいな、くらいです」と答えた。
会社を後にし、電車に揺られる。
今すぐにでも妊娠したいのか、私は子供が欲しいのか、それは旦那の子供なのか、それは幸せなのか。
ぐっちゃぐっちゃになる。
彼がいたとしても
結婚しているとしても
子供ができたとしても
私のような人間は、
自分の幸せは自分でしか決められないんだと思う。
どこかへ行ってしまいというより、
消えて無くなりたい気持ちの方が強い。
それを実現する勇気も手段もわからないけど。
最寄駅に近づくと、夕飯の献立を考え始めた。
こんな風にまた、毎日をやり過ごしていくんだろう。
スーパーに寄らず、家にある材料で夕飯を作る決意をし、ぐっと足に力を込め、電車を降りた。