おめめの歯形

自分の足跡を残すというより、必死に食らいついて歯形くらいしか残せない

わたしのやうなにんげん

数年前に勤めていた会社の、私の直属の上司が辞めると連絡がきた。

 

本社の経理にいる女性からだ。

本社が都外にあるため、上司に会いに東京にくるので、夜、上司も含めて一緒食事でも、とのこと。

私も最終的には責任のある立場にいたが、色々あって、最低な思いをして辞めた会社。

今更どうなのかと思ったが、もうずいぶん昔のことだ、と割り切り、行くことにした。

 

上司とは、まぁまぁうまくやってたつもりだ。

私より年下だが、一生懸命だし、天然で可愛いところもあった。

数字を作るのに、残業を沢山したし、上司が社長に責められた時も、私は必死に守った。

上司がお客さんから、好意を持たれてしまい、大ごとになった時も、間に入って鎮静させた。

その分、助けてもらったこともある。

私は社長と、社長が連れてきた新社員と揉めて辞めてしまったけど。

 

 

経理がわざわざ東京にくるのだし、上司も主役なので店探しをかって出た。上司は肉が好きとのこと、都内の有名店を経理に提案したが、連絡が途切れた。

 

ギリギリだとお店も取れないしなぁ、と思っていたところ、経理から、上司から私に連絡をするように言ってあるが、来てないか、の確認連絡が。

 

私に上司からは連絡がきていない。

どうも、経理の話を掘り下げてみると、上司は私と会うのが嫌らしい。

 

やっぱりそうか、と思った。

 

 

その数日後、つい数ヶ月前まで働いていた会社の同僚と飲んだ。

そこで、あまり関わりのなかった他部署の女性が辞めたと聞いた。

その女性は社内不倫の常連であり、男性社員6人と関係を持っていたので、あまり自分から関わらなかった、というのが真実。

私は不倫現場を目撃したこともあるし、不倫した社員の男から直接聞いてしまったりしたし、第一に、その女がペチャクチャ誰と寝ただの周りに喋るから、勝手に耳に入ってきた。

でも、私は誰にも言わなかった。

私はそうゆう話で盛り上がれない。どうでもいい、どうでもいいから、私には関わるな、のタイプだ。

 

私も酔っていたが、同僚も酔っ払っていて、ふいに

「2人とも辞めたから言うけどさぁ」

 

「久保さん、おめめのこと超嫌いって言ってたよ」

 

私は酔いがさめた

 

「なんか、偽善者ぶってるし、自分が嫌な人のことも嫌いじゃないです、みたいなアピールするし、そーゆー人、イヤなんだよねって」

 

やっぱり、そうか。

 

全人類から好かれたいと思ってないし、

会社の人間に好かれたいと思ってもいない。

 

それでも、自分が誰かに「嫌われている」という事実を目の当たりにすると、思いの外、痛いものですね。

 

月並みですが、私はそんなつもり、ありませんでした。

数年前の会社でも、数ヶ月前の会社でも、私は必死でした。

仕事だから。

私は働きにきているから。

 

誰かの事を嫌いになるのは、仕事上だけだ。

だって仕事じゃないか。

友達でもなんでもない。

私には、わからないことばっかり。

 

だけど

私のことを嫌いな人がいる代わりに、

今日も、私のことを好きで、大切にしてくれている人たちがいる。

 

ありがとう。